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軽度認知障害MCIの母との関わり方を通して成長できたことを感謝する

軽度認知障害(MCI)は、まだまだ馴染みの少ない言葉ですが、近年認知症の予備軍として知られるようになってきました。

実家の母がMCIだと思うようになったのは、半年前に父が亡くなってから。

この半年で、私が嫌な思いをたくさんしたように、母もきっと嫌な気持ちや不安になることも多かったと思います。

母と正面から向き合うことによって、いろんなことが見えてきて、いろんなことを学ぶことができたこの半年。

MCIの記憶障害と母の言動で、自分なりにわかったことについて。

 

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軽度認知障害MCIの診断基準

認知症の予備軍とされるMCIは、まだしっかりと確立されたものではないのですが、診断基準としては、以下の5つが挙げられます。

 

1.本人や家族から記憶障害の訴えがある
2.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害がある
3.日常生活には問題がない
4.全般的な認知機能はおおむね正常
5.認知症ではない

 

母の場合を当てはめてみると、1、2は該当するけれど、3~5に関しては断定できないところがあります。

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母の症状

1.記憶障害

父が亡くなった後、一日に何十回も同じことを繰り返し聞いてくる母の様子は、夫が急逝してパニックになっているということを差し引いても、なんだかおかしいな・・・と思うところは多々ありました。

思い返せば父が亡くなる2年くらい前から、あれ?と思う母の言動はあったのですが、おそらく父がうまくカバーしていたので、私も年相応の物忘れとして受け流していました。

 

母が認知症かもしれないと思ったのは、母が私のことを泥棒だと言ったことから。

これを機に、私も認知症についていろいろ調べるようになりました。

そして、認知症の予備軍である軽度認知障害MCIという言葉を知りました。

 

2.母の日常生活

現在、母は一人で暮らしています。
私の家とは廊下でつながっていますが、完全に生活は別。

母は自分で簡単な料理を作って食べていますが、母へは私が作った晩ごはんを取り分けて、届けています。

毎朝7時前には起床して、毎晩9時過ぎには就寝している母。
お風呂は2~3日置きに入っていて、2~3カ月に1度は美容院へ行く。

部屋も毎日簡単ではありますが掃除をしているし、少しずつ父の遺品も整理を始めました。

外出するのは、2カ月に1度の病院受診の時のみ。
日常の買い物は、私がすべて行っています。

こんな母をみていると、日常生活はほぼ支障がないように思われます。

 

最近の記憶障害について

1.洗濯機の使い方がわからなくなる

 

「洗濯機の使い方を教えて」と言ったのは、今回で何回目でしょう。

2年前に買い換えた洗濯機は、父がいたころはふつうに使っていたのですが、父が亡くなってから「使い方どうやるんだっけ?」と頻繁に聞くようになりました。

洗濯機のボタンに、押す順番に番号を貼っていたのですが、最近それもわからなくなった様子。

「この前、洗濯していたよね?」と聞くと

「今までずーっと洗濯ものは手洗いしていた」と言う母。

んなワケないんですけどねぇ・・・。
これ、認知症によくみられる取り繕いだよね。

ま、それ以上は追及せずに、今度は洗濯機の前に手順を書いた紙を貼りました。

今のところ、これでなんとか大丈夫そうですが、次に洗濯機の使い方がわからなくなるのは、いつだろう。

 

2.診察券の紛失騒動

いつもは母のかかりつけ医に私が薬だけ取りに行っているのですが、前回は母の診察がありました。

母が受診している間に、銀行や市役所で所用を済ませた私。
「私が戻ってくるまで、病院で待っていてね」と母に言っていたのに、病院へ戻ると母がいない・・・。

診察が早く終わった母は、そのまま隣の薬局へ自分で薬を取りに行っていたのでした。

 

それから2週間後、今度は私が母の薬を病院へ取りに行くと、診察券がないことに気付きました。

母の保険証、診察券、薬手帳などの一式は私が管理しているのですが、前回母が一人で薬局へ薬をもらいに行った際に、診察券を母から受け取るのを忘れていたのです。

母に「診察券持ってる?」と聞くと
「持ってないよ。あなたが全部持ってるでしょ」と、予想通りの答え。

いやいや、前回自分で薬取りにいったでしょ。その時病院から診察券受け取って、そのまま私がもらうの忘れていたんだよ。

・・・と、母にいくら説明しても
「病院から診察券なんてもらってないよ」の一点張り。

しまいには
「なんで私が診察券持ってるのよ!知らないよ!」と怒りだしてきたので、私もハタと気が付いたのですよね。

ああ、そうだった。
覚えてないことをいくら言ってもダメだった。

「ああ、ごめん、ごめん。じゃあ、私が診察券なくしちゃったんだね。あとで病院から再発行してもらうね」
と、母に言って部屋を出たのですが、5分後に母がうちにやってきて言いました。

「この青いのって病院の診察券か?」

私がいなくなったあと、一生懸命さがしたんでしょうね、母。
きっと記憶のどこかでは、自分がなくしたかもしれないという不安があったのでしょう。

まだ自分で必死に探そうとするあたりは、完全に忘れたりしているわけではないのかなぁ。

 

3.薬のしまい忘れ騒動

母の薬は血圧の薬と認知症の薬の2種類。
今まで2週間分の処方だったのを、今度は4週間分処方していただきました。

母に4週間分の薬を渡すと、いつもの通りの薬置き場に母が自分でしまいました。

ところが翌日、母が薬がないと言い出しました。

しかも「昨日、薬を受け取ってない」と言うのです。

いつもの薬置き場に薬は無し。その周辺にも薬は無し。
こればっかりは、診察券のように再発行してもらうわけにはいきません。さてどうしましょう。

4週間分の薬になったことを母に言うと、ぼんやりと思い出したようで
「そういえば、薬がたくさんあるから、今までの薬置き場(居間)に置くと、薬が悪くなるかと思って、どこかにしまったかも」と。

母と2人であちこち探したら、洗面所の棚から薬が見つかりました。

薬を自分でしまって置き忘れても、ヒントを与えると思い出すあたりは、認知症ではないよなぁ・・・?

認知症の薬レミニールの効果

アルツハイマー型の認知症に効果のあるとされるレミニールですが、早期に内服を開始すれば認知症の進行を抑制することができるとされています。

母は、夏ころからレミニールを内服しだしたのですが、当初は1日に何十回と同じことを聞く、新たに判断を求められるようなことに直面すると怒り出す、こちらから提案したことは一切受け入れず逆切れする・・・など、毎日母と接するのが憂鬱になるほどでした。

仕事から帰っても、家に入るのが嫌でしばらく車の中でボーっとすることも多かったあの頃。

 

レミニールは、1日8mgの導入量からスタートし、今は1日16mgを内服しています。

薬の効果なのか、私が母への接し方を学習するようになったからなのか、はたまた父が亡くなってから時間が経過したからなのかはわかりませんが、母は以前よりもずいぶん穏やかになったと思っています。

 

診察券があとで見つかったときも
「カバンの中から出てきたのよ。私もボケたもんだわねー。」と、母はオチャメに笑って話します。

以前は、こんな風に笑って話すなんてことはなかったので、私も母と話すのが憂鬱になることはずいぶん減りました。

年より笑うな 行く道だもの

診察券が紛失したとき、「病院で診察券を受け取ったのは母で、薬局に自分で行って薬を受け取ったのも母だった」ことを母に説明すると、母は「そんなことしていない。あなたが診察券を受け取ったでしょ。私は知らない」と怒りだしました。

母が覚えていないことを、いくら説明しても無駄なのに、私はいまだについつい母に確認するようなことをしてしまいます。

母が怒り出したことで、「やばい」と気づいたのですが、実はこの時母の表情に、これまでに見たこののない表情が見え隠れしているのに気付いたんです。

それまでは、母が怒り出すと何をどうやっても勝ち目はなく、恐いという印象しかなかったのですが、この時はちがったのです。

母が怒りながらも、泣きそうな表情になったのが見て取れたのです。

まるで、小さな子どもが母親に怒られて、必死に言い訳をするような表情だ・・・と、その時感じたのです。

 

記憶が失われていく恐怖を、母自身が一番よくわかっているのだ。
そして、不安でしょうがないのを、必死に隠そうとしているのだ。

 

いくつになっても母は母であり、母を超えることはできないと思っていた私ですが、この時初めて母の保護者になったような、母のことを守っていかなければならないのだという感情が沸いてきました。

徐々に失われていく記憶。
徐々にできなくなっていく行動。

脳の老化は、人格も動作もなにもかも退化させ、そして子どもに返っていくのだろうか。

 

子ども叱るな 来た道だもの
年より笑うな 行く道だもの

 

私はこれからも、母からたくさんのことを学んでいくことでしょう。

 

今年は、私にとって激動の1年でした。

 

コメント

  1. パキパキ より:

    今年も本当に多岐にわたる話題をほぼ毎日更新してくださり、大変感謝しております。少し年上の大変頼りになる先輩として崇めて?おります。真似できるところは少ないのですが(ぐーたらなもので)、考え方は本当に影響を受けていると思いますし、ハッとさせられることばかりです(*´∀`)♪来年も更新を楽しみにしております。良いお年をお迎えください。

    • そらはな より:

      パキパキさんへ♪
      コメントありがとうございます(#^^#)
      時々、なんのためにブログ書いているのかなーと思うこともありますが、いつか子どもに伝えたい情報だったり自分の備忘録として書いていけたらいいなと思っています。
      今年も、可能な限り更新していきたいと思っています。

  2. しろうさぎ より:

    激動の一年お疲れ様でした。
    わずかな期間でお母さまとの付き合い方を会得されたそらはなさんにを尊敬します。
    我が家は認知症は経験せずに4人の親を見送りましたが、今度は自分の老後の準備を始めないといけないステージに入りました。
    これからも参考にさせていただきます。
    お母さまとの事で愚痴りたくなったらどんどん毒を吐き出してくださいね。
    来年もよろしくお願いいたします。

    • そらはな より:

      しろうさぎさんへ♪
      いやいや、母との付き合い方は毎日手探りのような状態です。
      それでも、自分の考え方を変えることで、ぜいぶん気持ちも楽になるのだと思いました。
      しろうさぎさんは、すでにご両親と義父様、義母様を見送ったのですね。
      私も、自分の老後を真剣に考えないとならない歳になりました。
      明日はどうなるかわからないですが、それでも一日一日を精一杯生きたいと思います。
      今年もよろしくお願いします(#^^#)

  3. とも より:

    今年もあと15分余りになりました。
    そらはなさんにとっては、目まぐるしい1年でしたね。
    ブログを通して、そらはなさんとお話しできて、
    とても楽しかったです。色々と書きこんで失礼ではなかったかなと、気になっていましたが、同世代で、同じ年の子供がいるので、とても共感できました。ありがとうございました。

    親を超えることは、覚悟もいりますし、寂しさや悲しさもありますね。いつまでも娘のままでいたい自分と、老を受け入れなければならない現実。
    著者ははっきりしませんが、介護関係の本の宣伝に、
    老い(介護?)は親が子供にできる最後の教育

    ていう一文がありました。

    人として先に生まれた親が、身を以て老いを生きることを教えてくださってるんだな。とジーンときました。

    明くる年も変わらず、ポジティブなそらはなさんのブログを楽しみに拝見いたします。どうぞ良いお年をお迎えください。

    • そらはな より:

      ともさんへ♪
      あけましておめでとうございます。
      父が亡くなり、母がボケてきて、たぶん自分ひとりではどうしてよいかわからなかったと思いますが、ブログを通して多くの方に助けられました。
      ともさんは、いつも的確な情報をくださり、本当にありがたかったです。
      「老いは親が子どもにできる最後の教育」って言葉、本当にジーンときました。
      親が年老いて退化していく姿は、できれば見たくない。
      でもこれが現実。そして親が身をもって教えてくれているのだと思えば、なんともありがたいこと。
      これからも嫌なこともたくさんあると思いますが、いろんな人の力を借りながらやっていきたいと思いました。
      今年もよろしくお願いします(#^^#)

  4. T M ♪ より:

    秋田に知り合いができた気でおります。
    空花さんちに “ 通りがかれて ” よかったです♡
    今年もおじゃましてたまにおしゃべりしていきたい(笑) と思っています。
    よろしくお願いいたしますm(_ _)m

    「老いは親が子どもにできる最後の教育」本当にその通りですね。

    お母様が
    まるで、小さな子どもが母親に怒られて、必死に言い訳をするような表情だ・・・
    と感じられたという件(クダリ)、私も同じことありました。

    手探りし、よい情報やアイディアがあれば共有しがんばっていきましょう。
    …と同世代で声を掛け合いたいですね。

    • そらはな より:

      TM♪さんへ♪
      こんにちは(#^^#)
      ブログやってると、出会うはずもない方たちとこうしてお話できるのが、不思議です。
      すごい時代に生きていられて幸せだと思います(#^^#)
      親は、だんだん子どもに返っていくんでしょうかね。
      寂しいものです。
      同じ悩みを持つ方たちとの情報交換は、本当にありがたく助かります。
      今年もよろしくお願いします。