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認知症の母と再会 私が『これでよかった』と思えた理由

先日、一ヶ月ぶりに老健施設で暮らす母と再会しました。

日曜日に洗濯物を取りに行った際、コロナの面会制限が解除されたばかりということもあり、通常は平日のみの予約制のところを、スタッフの配慮で急遽ロビーで面会できることになったのです。

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母と会うまでの緊張感

面会前のわずか数分、私の心にはさまざまな思いが巡りました。
「母は私を覚えているだろうか?」
「何を話せばいいのか?」
そして、もし「家に帰りたい」と言われたら、私はどう答えればいいのか——。

そうこうするうちに、廊下の向こう側から、聞き慣れた母の声が聞こえてきました。

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母の反応と意外な驚き

スタッフに手を引かれて現れた母は、私の顔を見てもすぐには分からない様子でした。
むしろ、見慣れないロビーの雰囲気に驚き、「ここはどこ?」と何度も尋ねます。

スタッフが「娘さんが来ていますよ」と声をかけてくれると、ようやく私の方を見ましたが、その表情には懐かしさや喜びは感じられませんでした。

それでも母は、私や姉、孫たちの名前を呪文のように繰り返していました。
ただ、その「娘」が目の前にいる私だとは、どうやら結びついていないようでした。

一方で、母の身なりは以前よりも整っていました。
家では髪が乱れがちだったのに、この日はきちんと整えられていて、少し驚きました。

服装も、毛糸のカーディガンの上にブラウスを重ねるという独特なコーディネートでしたが、それも母が自分で着たのだと思うと、なんだか微笑ましい気持ちが湧いてきました。

施設で過ごす母の日々

母はスタッフに「ここは我が家」と話しているそうです。
それどころか、「自分で買った土地」だと思い込んでいるとか……。

スタッフによれば、母は日中の大半を食堂で過ごし、新聞を読んだり、テレビを見たりしているとのこと。午後のおやつ前には、ラジオ体操にも欠かさず参加しているそうです。

家にいた頃の母は、家事が難しくなり、電子レンジの使い方さえも分からなくなっていました。
一日中ソファーに座り、何度もチャンネルを変えながらテレビ画面を見つめていました。

しかし今は、温かいご飯が用意され、毎日リハビリスタッフが寄り添いながら歩行訓練をしています。
施設内は快適な室温が保たれ、スタッフの見守りがあることで危険も少なく、安全に過ごせる環境が整っています。

「母は、きっと穏やかに、満足のいく日々を送っているのだろう」
そう思うと、少し肩の力が抜けるのを感じました。

自分の選択に対する気づき

この面会を通じて、気づいたことがあります。

それは「安心して暮らせる場所と人がいれば、どこにいても幸せである」ということ。

そして、その「人」は、必ずしも私でなくてもよかったのだ、ということです。

よく「最期まで自宅で過ごしたい」と言われますが、認知症を抱えた母にとって、本当に大切なのは「家」という物理的な場所ではなく、安心して過ごせる環境なのだと実感しました。

母が今いる場所は、温かい食事があり、適切なケアが受けられ、スタッフが寄り添ってくれる。
それならば、「ここが母にとっての一番の場所なのだ」と、受け入れようと思いました。

もちろん、未だに迷いがないわけではありません。
でも、「これでよかったのだ」と、自分に言い聞かせています。

そろそろお部屋に戻りましょうか

「そろそろお部屋に戻りましょうか」そうスタッフが声をかけると、母はゆっくりと立ち上がり、スタッフに手を引かれて歩き始めました。

「またね!」「また来るよ!」
できるだけ明るい声で母に声をかけましたが、母は振り返ることもなく、返事もなく、そのまま廊下の角を曲がり、姿が見えなくなりました。

私は小さく声に出してみました。
「これでよかったんだ……」

ほんの少しだけ気持ちが軽くなった気がしました。

支え続けることが家族の役目

「全部自分の手でやらなければならない」——そんなふうに思い込んでいた頃もありました。

でも、今の私にできるのは、母が安心して暮らせる環境を支え、その生活を見守ること。

これからも定期的に母に会いに行き、母の表情や声を確かめながら、できる限りのサポートをしていきたいと思います。そして、母が少しでも多くの穏やかな時間を過ごせるよう、心から願っています。

 

 

 

コメント

  1. うぐいす より:

    そらはなさん、
    大変よく頑張られましたね。

    お母さま、それで良かったのですよ。一日の大半を食堂で過ごされていらっしゃるなんて素敵な話ですね。
    誰かが居てくれる場所ですから。

    お二人にとって一番良い選択だったと思います。
    自分で買った土地だなんて…。

    微笑ましいですね。

    色んな事が、娘さんの事も分からなくなっても、決して不幸では無いのでしょう。

    そんな気がします。
    ちょっぴり寂しいですけどね。

    • そらはな より:

      うぐいすさんへ
      私も、面会したからこそ、これでよかったんだと思えました。
      母をみていると、自分の将来のことも考えずにはいられません。
      母が教えてくれているのだと思っています。

  2. ひろ より:

    そらはなさん。

    私も今日、老健に居る実母に面会してきました。
    キレイに髪を整えてもらい顔色も良く、なにより良い表情だった母。

    入居当初は色んなことがあり、私も自分の選択が間違いだったのかーと
    不安になることもありました。
    でも、入居後一ヶ月半経ち、元気で前向きな母を見ていると、
    「これで良かったんだ」
    って、思えるようになりました。

    一番は母の安全と快適に過ごせる環境です。
    施設の方々と相談しつつ、これからも見守っていきたいと思います。

    一緒に母を見守っていきましょうね

    • そらはな より:

      ひろさんへ
      ひろさんのお母様も、老健で快適に暮らしているのですね。よかったです。
      「施設入所は、早すぎても遅すぎてもダメ」と言っていた姉の言葉が思い出されます。
      きっと、ひろさんのお母様もうちの母も、最適なタイミングでの入所だったんだと思います。
      今週は、うちの姉も母のところへ面会予定です。

  3. ゆきんこ より:

    初めまして
    同じく秋田県在住です。
    義母と同居していた義兄が突然入院した為、1週間ほど通いで義母の世話をしましたが、日中1人にしておけずショートステイを利用しています。今後老健入所も検討してますが、老健は3ヶ月が限度と聞きました。そらはなさんはその後の対応を検討してますか?

    • そらはな より:

      ゆきんこさんへ
      こんにちは(⁠•⁠‿⁠•⁠)
      そうなんてすよ〜。老健はずっといれるわけではないので、慣れたところで、いずれ退去しなければならないんですよね。
      ただ、3ヶ月経ったら絶対出なきゃならないわけではなく、そのへんは融通がきくようです。
      うちの場合は、次なる施設はグループホームかな、と思っていますが、その先のことも考えると、病院併設のところがよいのかな、とも思っています。
      いずれにせよ、春が来る頃にはグループホームや有料老人ホームなどの見学に行きたいと思っています。

  4. ゆきんこ より:

    そらはなさんへ
    義母の入所施設は12月からで二か所目のショートスティの施設です。
    ケアマネさんから、老健もしくはサービス付き高齢者住宅等の選択を考えてもらえらばと提案されています。老健でも施設によって対応が違うみたいですね。
    できれば次の移動で最後にできるように対策をねっているところです。
    義母も生活が慣れた頃にまた移動を繰り返すとかなりのストレスだろうと
    急に直面した出来事で戸惑うばかりですが義母にとって何が最良なのかを優先して考えたいとおもいます

    • そらはな より:

      ゆきんこさんへ
      本当に、なるべくならば施設の移動は極力したくないですよね。
      私も、次の施設のことを、よーく検討したいと思います。