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認知症になった母との会話が、初めて楽しいと思えた日

グループホームで暮らす母に会いに行った日。
ただ会話を交わし、一緒に歌っただけなのに、こんなにも楽しく、温かい気持ちになるなんて。

少し前まで抱えていた罪悪感や寂しさが、ふわりとほどけていくような――そんな一日でした。

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繰り返す会話が、こんなにも楽しい

食堂に入ると、母は隣に座っている方(友だちと呼ぶ)と、楽しそうに大きな声で話していました。

会話の内容は、まるで無限ループ。でも、二人はちゃんと返事をして、お互いに会話を楽しんでいるのが不思議です。

「私は昭和7年生まれ。あなたは?」

「私は昭和8年7月10日!」

「同じような年だね。」

そして、また母が尋ねます。

「じゃあ、あなたは何年生まれなの?」

「私は昭和8年7月10日!」

何度繰り返しても、二人とも楽しそうに会話しているのが、何とも愛おしく感じます。

その後、母が私の顔を見て、ふっと言いました。
「あなたは何歳になったの?」
「60歳だよ」と、少し照れくさく答えると、母と友だちが声をそろえて言います。
「まぁー!まだ若いのね。」

母は笑いながら、こう言いました。
「うちの子どものような年齢だこと」
(あなたの子どもですが)と心で答えながら、私も笑って返します。

なんだか、ほんとうに楽しくて、温かい気持ちになりました。

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歌が流れると、自然に歌いだす

テーブルの上にあった歌詞カードを何気なく開くと、友だちがすぐに歌い始め、母もそれに合わせて歌いだしました。

目で歌詞を追いながら、最後まで歌えることに少し驚きます。

忘れてしまうことが増えても、音楽は心の奥にしっかり残っていることを、改めて実感しました。

「しらかば〜 青空〜 南風〜」
懐かしいメロディーに包まれながら、私も思わず一緒に口ずさみました。
こんな小さな瞬間が、すごく楽しくて幸せでした。

今日はただ、楽しかった

家で一緒に暮らしていた頃、私は何度も同じ話を繰り返す母にイライラしていました。

「さっきも聞いた!」と、会話を遮ってしまうことが多々ありました。

でも今は、何度でも、何を聞いても、ただ笑って返せます。
母の言葉を、ありのまま受け止められるようになりました。

グループホームで過ごす母は、私が思っていたよりずっと自然で、母らしく、そこにいました。

スタッフの方が教えてくれました。
「この二人、なぜかウマが合うみたいで、いつも仲良くお話ししているんですよ。」

グループホームでも、母はちゃんと友だちを作っているんだ!と、なんだか嬉しくなりました。(当人同士はどう思っているかわかりませんが)

小さなやさしさを受け取りながら

母の顔に目やにがついていたので、そっとタオルでふき取ってあげました。

「どうもすみません」と母は言い、じっとしていました。

普段からスタッフの方々がこうして母にやさしく接しているんだろうなと感じました。

その温かさが、母の表情にしっかり伝わってきます。

私は心から「グループホームに入ってよかった」と思えました。

母のありのままを、受け入れられるようになったから

家にいた頃、私はいつも母の言動を正そうとしていました。

認知症だとわかっていても、どこかで「前のようにしっかりしていてほしい」と願っていました。

母が困らないようにと必死でしたが、それは空回りしてしまい、私だけがイライラして、私だけが悲しくなり、私だけが虚しくなることの繰り返しでした。

母はすぐに忘れてしまい、何度言ってもわからない。それをなかなか受け入れられなかったのです。

でも、今は違います。
母がグループホームに入ってから、私自身が母の「今」を、ありのまま受け入れられるようになりました。

何も覚えていなくてもいい。
何度も同じ話をしてもいい。
ただ、ここにいて、笑っていてくれるだけで、それでいい。
そんなふうに思えるようになった自分に、少し驚きながらも、心から嬉しく感じています。

おわりに

今日の面会は、心から楽しく、帰り道も胸の中は温かさでいっぱいでした。

タオルが足りないと言われ届けに行ってきた

グループホームで過ごす母は、穏やかで幸せそうに見えました。

そして、在宅では絶対に得られなかったであろう私の中のやさしい気持ちが、まだちゃんと残っているんだなぁと、ふと感じました。

 

 

 

 

コメント

  1. 麦おばちゃん より:

    相変わらず毎日楽しいブログをありがとうございます

    お母様の施設暮らしという選択、いろいろ葛藤もあったことでしょうが
    家族だけで向き合うのではなく
    プロとして関わって下さる方々が居てくださると
    ほんとに助かりますよね。

    家族が要介護者となった時
    その人のことを好きでいられる距離感を保つことが
    重要だと思います。

    そらはなさんが優しい気持ちで居られること
    それがお母様にとってもなによりなことだと
    私まで嬉しくなりました!

    • そらはな より:

      麦おばちゃんさんへ
      「その人のことを好きでいられる距離感を保つ」
      おっしゃる通りですー!これ、言いたかった!(笑)
      たとえ家族であっても、距離感って大切ですよね。
      家族がすべての介護を担うのは、お互いにとっても無理があると思いました。

  2. ひろ より:

    そらはなさん、こんばんは。今日もお疲れ様でした!

    そらはなさんの母上の記事を読んだ日、なぜかいつも私も母に会いに行っている
    気がします(笑)偶然なんでしょうけど、余計にほっこりします。

    GW突入ですが、私の母にはそんなこと関係なくて、一生懸命自分でご飯を食べ、
    リハビリに励み、私が「そろそろ帰るね」と言うと、「何か持って帰るものを
    買ってやりたい」などと、ホロリとする言葉を掛けてくれます。

    通いの介護をしていた頃の私の気持ちと、いまの気持ち・・・本当に変わりました。
    そらはなさんや私と同じように感じている娘が、この世にたくさんおられるんだろう
    な~「また母の顔を見に行こう」って心から思えますね。

    • そらはな より:

      ひろさんへ
      母が、快適に安全に暮らしていることがなにより大事です。
      だから、自宅にこだわることは必要ないのだと思いました。
      ひろさんのお母様も、おいしくごはんを食べられて、リハビリも続けられていて、なにより幸せなことだと思います。
      介護制度がある今で、本当に良かったと思いました。