母は認知症です。
それでも、身の回りのことは自分でできるので、ある程度のことは母におまかせしています。
ところが先日、母が入れ歯洗浄剤を食べてしまうという出来事がありました。
前兆はあった
母は60代で入れ歯となり、それ以来入れ歯洗浄剤を使って入れ歯の手入れをしてきました。
手入れと言っても、容器に洗浄剤を溶かして、入れ歯をブラシで洗うという簡単な作業です。
認知症であっても、昔からやってきた習慣的な作業は問題なく行えるので、私も特に気にしたことはありませんでした。
ところがある日のこと。
母が入れ歯洗浄剤の入った箱ごと持ってきて「これ、どうやって使うのか?」と聞くのです。
洗面所で母に使い方を実演すると、母は何度も自分に言い聞かせるように、入れ歯の洗い方を繰り返しました。
変だな?と思いました。
これまでずっとやってきた行為が、ある日突然わからなくなるものなのか?と、不思議にも思いました。
その後母は、洗い方を思い出したのか、納得したようだったので、入れ歯洗浄剤はそのまま母の洗面所に置いてきました。
入れ歯洗浄剤を飲んでしまった
ところが翌日の夕方。
私が仕事から帰ると、母がやってきました。
手には、またしても入れ歯洗浄剤の箱を持っています。
そして今度は、こう聞いてきました。
「これ、なんだ?」と。
入れ歯洗浄剤だと説明すると、母は特に悪びれる様子もなく
「入れ歯を洗うやつ?知らなかった!なんだかわからないから薬だと思って飲んでしまったよ」と言うではないですか!
一瞬言葉を失いました。
人間って、あまりにも驚くと咄嗟に言葉が出てこないものなんですね。
何度も母に「本当に飲み込んだの?」と聞くものの、答えは一貫としてブレることもなく
「だって薬だと思ったから」と言うのです。
箱の中の洗浄剤の数を確認すると、確かに昨日よりも一つ減っています。
実際に母が口に入れるところは見ていないので、本当のところはわかりませんが、入れ歯洗浄剤が1個なくなっていたのは事実。
そしてそれを「飲んだ」と言う母もまた事実。
幸い入れ歯洗浄剤は弱アルカリ性のもので、1個飲んだくらいでは大丈夫なようですが、念の為母には牛乳を飲ませました。
その後、母に「お腹は痛くないか」「気持ち悪くないか」など聞いたものの、入れ歯洗浄剤を飲んだこと自体を覚えていないので、母は「毎日なんでもおいしく食べてるよ」と、明るく答えるのでした。
高齢者の誤飲
消費者庁のHPによれば、75歳以上の高齢者の誤飲・誤食事故は決して少なくないそうで、薬の包装シートや漂白剤、乾燥剤など、通常であれば考えられないものを食べてしまうことも多々あるそうです。
それは、視覚・味覚等の身体機能や判断力の低下によるもの、さらには認知症などにより、誤飲・誤食のリスクが高まるためだと考えられます。
言われてみればその通りなのですが、母がこれまで当たり前のようにやってきたことが、ある日を境にわからなくなってしまったというのは、ちょっとショックでした。
しかも、ふだん内服している薬と一緒にしていたわけでもないのに、なぜ母は洗面所に置いてある入れ歯洗浄剤を薬だと思ってしまったのでしょう。
そのうえ、入れ歯洗浄剤ってけっこう大きいので、果たしてそれを口に入れたとしても飲みこめるものなのでしょうか?
試しに私も入れ歯洗浄剤を舐めてみたのですが、しょっぱさの次に苦さがやってきて、とてもじゃないけれど全部を口に入れる勇気はありませんでした。
これまで出来ていたことが、だんだん出来なくなってくる。
歳をとるってこういうことなんですよね。
ましてや認知症であれば、手の届くところに余計なモノは置かないほうが賢明です。
というわけで、入れ歯洗浄剤は撤収しました。
今、母は入れ歯を水洗いしています。
「入れ歯洗浄剤がない」と騒ぐこともありません。
その後体調を崩すこともなく、至って元気なので本当によかったですが、今後は母の部屋には「食べるもの」しか置かないようにします。
コメント
高齢者の誤嚥事故、本当に「こんなものを!?」と思うようなものがありますね〜・・・
口に入るものなら何でも原因になるといいますが、総入れ歯も飲み込んでしまうことがあると聞きます。嚥下機能弱ってるお年寄りがそんなもの飲み込めるのか?と思いますが、あるんですよね・・・
なので、入院や施設入所すると、入れ歯を外してしまう、というところもあると聞きます(全部が全部、というわけではありません)。その結果、咀嚼して食べられなくなるので食べ物が制限されたり、食が落ちて胃ろう、等々リスクがあると思うと、どうすればいいんだろう・・・と考えてしまいますよね。
誤嚥のリスクはあっても食べる楽しみを、ということを優先させるか、それとも誤嚥事故を防ぐために万全を尽くすか、本当に悩ましいところです。
誤嚥だけでなく、転倒とかもそう。身体の安全確保のために何かを犠牲にするか・・・この辺はバランスでしょうけど、本当に難しいと思います。
ご本人のQOLと満足度、そらはなさんはじめとする家族の希望、そしてケアを担当する側の希望、それぞれが一致してれば問題ないんですけど、そうでないこともあるので、十分に話し合い、疑問や不安は打ち明けて、説明してもらって、納得して、というプロセスが大事だと思います。
お母様には、安全に快適に、人生を過ごしてほしい。そらはなさんも、ご自分の人生を大切にしてほしい。人生、思い通り100%というわけにはいかないけれど、ベターであってほしい。そう思います。
白雪さくらさんへ
いつも温かいコメントありがとうございます。
いゃぁ〜、まさか入れ歯洗浄剤を飲んでしまうなんて、想定外でした。
でも、想定外のことをするから認知症なんですよね。
母と接していると、いろんな意味で勉強になります。
毎日テレビの前にただ座っているだけの母から、食べる楽しみを奪ったらどうなるんでしょう。
私がよかれと思ってやることも、母にとっては嫌なことかもしれません。
ただ、認知症になってしまった今は、母が本当に望んでいることがわからなくなってしまいました。
ほんとに、毎日悩ましいです。