キッチンに差し込むやわらかな光を見るたび、リノベーション中に担当者から最初に提案された“高い位置のFIX窓(型ガラス)”を思い出します。
明かり取りとしては合理的で、収納スペースも確保しやすい──その説明はよくわかりました。
けれど、昭和生まれの私にはどうしても「開かない窓」がしっくりきません。
窓といえば、開けて風を通し、外の様子がわかるもの。
そんな感覚が体に染みついていて、明かり取りだけの窓がどうしてもイメージできませんでした。
そこで私は、外が見える高さに、開閉できる横滑り出し窓を選ぶことにしました。
景色が見える窓にしたかった理由
「窓、開けますか?」
と担当者に聞かれ、
「外が見たいです」
と答えた私。
料理をしながら外の景色が見える──
そんな小さな憧れが、私の選択を後押ししました。
開閉できないFIX窓ではなく、風も光も取り込める横滑り出し窓。
その選択に、当時は迷いはありませんでした。

暮らしてみると、思っていた使い方とは違った
ところが、実際に暮らし始めると少し予想外でした。
カップボード上の横滑り出し窓は少し高く、外を見るには背伸びが必要です。

カップボード上の横滑りだし窓
それに、キッチンの横滑り出し窓をわざわざ開けて外を見るより、
ダイニングテーブル横の窓からのほうが、簡単に外を眺められます。
第一!
そもそも私は、料理は短時間でさっと作ってしまいたいタイプ。
優雅に料理中に外を眺める──そんな暮らし方をする自分ではなかったことにも気づきました。(←遅すぎる)
「これなら、最初のFIX窓でもよかったかもしれない」
そんなふうに思った時期もありました。
炊飯器の“蒸気対策”として大活躍
しかし、その考えはすぐに変わります。
カップボードの上には炊飯器を置いています。
炊飯中に立ち上る蒸気を見るたび、以前の家で棚板がゆがんでしまった記憶がよみがえりました。
「この蒸気を逃さねば…」
と炊飯中だけ窓を開けてみると──
蒸気がスッと外へ抜けていく。
向かい側にはIHのレンジフードもありますが、炊飯器の真上で発生する蒸気を処理するには少し距離があります。
だからこそ、この位置に開閉できる窓があって本当によかったと感じました。

ご飯を炊く時には窓を開けています
さらに、この窓は道路側に面しているため、外からの視線を遮る すりガラス(型ガラス) を選びました。
やわらかい光だけを取り込みながら、安心して換気ができます。
景色を見るために付けた窓が、まさか 湿気対策の主役 になるとは思ってもいませんでした。
高気密高断熱住宅だからこそ気づいた「音の変化」
もうひとつ、住んでみて気づいたことがあります。
わが家は高気密高断熱住宅にリノベーションしたため、窓を閉めていると驚くほど静かです。
ところが、横滑り出し窓を開けると、道路側のため車の走行音が意外と大きく聞こえます。

窓を開けると車の音が気になる
前の家では、家のあちこちに小さな隙間があり、外の音が常に少しずつ入っていたのでしょう。
そのため窓を開けても気にならなかったのかもしれません。
今は家の中が静かなぶん、窓を開けたときの音の変化がより大きく感じられます。
これも、実際に暮らしてみなければわからなかったことです。
家づくりに“完璧な正解”はない
炊飯中は毎回この窓を開けていますが、最近は蒸気レス炊飯器もあるそうですね。
次に買い替える時には検討してみたいと思っています。
それでも今は、この窓を開閉できるタイプにして本当によかったと思っています。
設計中の私は「景色が見えること」を重視していました。
でも実際に暮らしてみると、「蒸気を逃がせること」の方がずっと役立っていました。
家は3回建ててようやく理想通りにはなる──そんな言葉がありますが、きっと何度建てても「もっとこうしたい」は生まれるのでしょう。

この眺めはとっても気に入っている!
それでも、暮らしの中で見つけた小さな発見や、思いがけない役立ち方が、家への愛着をそっと深めてくれます。
窓を見るたびに思います。
“暮らしは、住んでみて初めてわかることの連続だ” と。


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