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母の記憶障害 まだらボケと新しい記憶は忘れてしまう時の対処法

「母さん、水漏れのこと覚えてた?」
帰宅した夫に聞かれたので、私はため息交じりに答えました。
「全然覚えてなかったよ」と。

実家の水道の検針メーターが、水を出していないのに回転していると指摘され、その日は業者の方に見に来ていただいたりしたのですが、母はそれらの出来事をすっぽりと忘れていたのです。

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水漏れ事件

水道の検針に来た方に、「水道のメーターがずっと動いている」と指摘されました。
玄関先で母が対応していたのですが、その日たまたま自宅にいた夫が、母に代わって話を聞いてくれたので、本当によかった。

私の職場に「実家の水道がどこか漏れているみたいだから」と夫から連絡が入ったので、その後は私が業者の方へ連絡をし、その日のうちに実家へ見に来てもらいました。

水漏れしている箇所は、実家のキッチンにある元栓2か所またはボイラー室の水道管らしいのですが、明日きちんと配管を調べるとのこと。
キッチン側の配管の水漏れならまだいいのですが、ボイラーは勝手口の土間に設置されているので、もしボイラー室の配管が水漏れしているのであれば、下のコンクリートを壊さなければならないこと、そうなれば工事は大ごとになりお金もかかってしまうことなどを説明されました。(職場に電話で連絡をしてくれた)

仕事が終わって家へ帰り、すぐに母に聞きました。
「水漏れしてるんだってね」
しかし、母。
なんのことを言われているのかわからないといった表情で、ポカンとしている。

「今日、水道屋さん来て、水漏れしているって話していたんでしょ?そのあと、業者の人が見にきてたでしょ?台所で調べていったでしょ?」
そこまで話しても
「そういえば、来てたような・・・」と母。

この「来てたような」という返事も、本当に覚えているかどうかはわかりません。
単に私に話を合わせているだけかもしれません。
「水道料金の紙はどこにあるんだっけ?」とか「水道料金はどの口座から引かれてる?」とか、話をすり替えてきましたから。
一見、水道料金の関連ある話をしているように思われますが、「水道の検針の方が来た」ことも「業者の方が調べに来た」ことも、私が何度か話をふっても、その出来事についてはひとつも答えませんでしたから。

認知症の記憶障害の特徴は、このように「体験したことを丸ごとごっそり忘れる全体記憶の障害」なのです。

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まだらボケ

「おばあさんのボケって治ったの?」
お盆に帰省した次男がそう聞くほど、母はとってもシャキシャキしていました。
次男に対して
「向こうでちゃんと食べてるの?」とか「バイトがんばってるの?」と言い、時には「がんばりなさいよ」と激励し、はた目にはしっかりしたおばあちゃんを演じておりました。

そういえばこんなこともありました。
お盆期間中、我が家にはお寺さんがお経をあげにやってきます。
たまたま夫が外出している最中にお寺さんが来たので、母と私と次男と長女とで仏壇の前に座り手を合わせました。

お経が終わり、お寺さんが立ち上がった時、私は自分の目の前をお寺さんが通り過ぎるまで、座ったままお辞儀をしました。立ち上がって頭を下げるよりも、座って頭を下げるほうがより丁寧かな・・・?という自分なりの解釈でした。

すると母。
「あんた、何座ってるのよ。お寺さんが立ったらあんたもすぐに立てばいいでしょ!」と、私に言ってきたのです。
母は足が悪いので、お経をあげている最中も腰高イスに座っています。お寺さんが立ち上がったときも、すぐにイスから立ち上がったのが母。
母の隣に座っていた次男もつられて、すぐに立ちあがりました。
そして母は
「あんたのお母さんは座ったままで、なんて失礼なんだろうね!」と次男に相槌を求めたのです。
次男も「そうだよねぇ!」と母に同意。

ちなみに次男は母の扱い方がとても上手で、母を怒らせないようにする術を小さいころから身に着けてきました。たとえ母がまちがっていることを言っても、波風立てないようその場では必ず同意します。
「えっ!それはちがうと思うよ」と反論する私とはちがって、次男のほうがよっぽど大人で賢いやり方なのです。

50歳を過ぎても仏壇の前で怒られる私って・・・。
仮に座ったままでお辞儀をするのが不作法だったとしても、なにもみんなの前で怒らなくていいじゃん!
まったくどう思う?お父さん!・・・と父の遺影を見たところで、私のムカムカは治まらず、その後母とは口をきかなかったもんね。(←私のほうがよっぽど大人げないのよ)

とにかくお盆期間中、何人かの訪問客が来ている間の母は、とーってもしっかりしていておりました。
これが認知症のまだらの症状なんでしょうね。

記憶障害の時の対処法

水道の検針の方が帰ったあと、夫が母に「午後に業者の人が水漏れしているところを調べにくるから」と話したそうです。
すると母は「なんで水漏れしていることがわかったの?」と聞いたそう。
さっき検針の人がきて説明した内容をすっかり忘れているばかりか、その検針の人が来た事実すら覚えていなかったそうです。

わずか数分前の出来事をすっぽり忘れてしまっているのですから、夕方帰宅した私が水漏れのことを聞いたって覚えているわけがないのですよね。

しかし、こういったことはもうすっかり慣れました。
母が覚えていなかったら、また説明する。
1分後にまた同じ質問をされたら、また同じように答える。それだけなんです。

何回も同じ会話が繰り返されたあと、私は必ず母に言います。
「ちゃんとメモしておいて」と。すると母はテーブルの上にいつも置いているメモ帳に自分で書き留めるのです。
私が書いてもダメなんです。母が自分の字で書くからこそ、あとでそれを見たとき納得するのです。私の字では「こんなメモ初めて見た」と言われておしまいですからね。

母に何度も同じ質問をされて、同じ答えを何度もして、最後にメモらせる。
これでこの話は終わりです。
そこそこ繰り返したら、あとは受け流して引き上げる。

これが、記憶障害が著明な母への対処のしかたです。

今はまだ日常生活は一人で行えている母ですが、これから症状がどんなふうに変化していくかはわかりません。
私もいつまで仕事を続けられるのかなぁ・・・。
ふと、そんなことを考えたりするこの頃です。

コメント

  1. kumakuma より:

    家庭に入る事になれば、イライラ増しで、はけ口も無く、大変だけど、ヘルパーだけじゃ時間的に無理だろうし。どうしましょ。我が家の問題でもあります。

    • そらはな より:

      kumakumaさんへ♪
      私も、介護で離職するのは極力避けたいのですが、本当にこればっかりはどうなるかわかりませんよね。
      その時できるベストを尽くすしかないのですが、やっぱり気が重くなっちゃいますねー。

  2. T M ♪ より:

    はじめは途方に暮れちゃったでしょうが、
    対処法が確立してよかったです。
    〝ご自分の字でメモしてもらう!〟私も心の引き出しにしまいました!

    ご次男さんはお若くして処世術に長けているのね。
    でも、比べて空花さんを カシコクナイ とは思えないです。
    タイプの違いかと思う…
    私としては 空花さんの方が真摯に思えて共感します。

    ひょっとしてご次男さんはお祖父さんの気質を受け継いでいる…??
    思うに〝惚れた女〟の強気やキツさは可愛いと思えるのかな? 男の器ってヤツ??
    松◯一代さんご夫妻も元はそうだったのが、船◯さんが優しすぎて抑えが効かなくなってどうしようもなくなったのかな…と下衆の勘繰りをしています。

    私の学生時代のグループに 支配的なキッツイ性格のコがいて、周りをキツクナイ友だちで固めてしまい、仕事でも結婚でも削られることなくきてます。母親にはなりませんでしたけどね。
    キツイですよ〜。最近意に背いて怒らせました。この歳になったらもういいでしょと思って、とりなしません(笑)。他人ならそれで済むが…(´・ω・`)

    昔、加賀まりこさんが、プロがきちんと世話してくれる場所に入ってもらうことを恥じたり後ろめたく思わなくていい、その方がお互い快適に暮らせるのだから というようなことを仰ってました。
    随分上の世代ですけど…根っからの都会っ子(笑)だから割り切れたのですかね〜?

    • そらはな より:

      TM♪さんへ♪
      ほほぅー。と、唸ってしまいましたよ。
      「惚れた女の強気やキツさはかわいい」かぁ・・・。
      そんな風におおらかに見ることができるといいのですけどねぇ。
      次男は、小学生の頃しょっちゅううちの母に怒られていて(3人の中で一番落ち着きがなかったので)、きっと次男なりに学習したんでしょうね。
      今では一番母の相手が上手で、母も次男のことをとってもかわいがっているんです。
      私もこの歳になると、友人関係で合わない人とは徐々に距離をとっていけばいいと思っていますが、親子はねぇ。縁は切れないですもんね。
      親の介護、そして自分も歳をとったらどうなるのか、先の見えない不安はたくさんありますね。

  3. さまちゆ より:

    はじめまして。いつも参考にさせて頂いてます。
    そらはなさんのお母様がうちの母と似ています。認知症ではありませんが、価値観の押し付けなど、私はまあまあうんざりしています。どうして良好な関係が築けないのかと自己嫌悪もありますが、まず否定批判ばかりされては無理ですよね。
    我が子には、素直に愛情を伝えられる母でありたいと思うばかりです。
    もう母親が変わることはないですよね。でも私は、大きな心で受け入れられないです(笑)
    愚痴になり失礼しました。仲良し母娘が回りに多いので、このブログは共感ができなんか嬉しいです。

    • そらはな より:

      さまちゆさんへ♪
      はじめまして(#^^#)
      さちまゆさんも、お母さまとの関係で悩みがあるんですね。
      うちの母が非常識で、人間的にも尊敬できなくて、もうどうしようもない人だったら、それはそれできっぱり縁を切ることができるのかもしれない。
      でもそうじゃないんです。育ててもらった恩もあるし、愛情も注いでもらったと思っています。
      だけど・・・言葉がきつくて刺さるんですよ(-_-;)
      私もどこかで母と分かり合いたいと思っている。でもそれはもう無理なんだろうなぁ。
      割り切ってつきあうしかないのでしょうねぇ。

  4. やまこ より:

    お盆にみんなの前で叱られて災難でしたね。でも今のわたしなら、それは感激、そしてじわじわと嬉しいものと思えてしまいます、きっと。ああ、まだ親が叱ってくれる、まだまだやるじゃん、そんな感じ。そのうち有り難さが実感できる日も訪れるでしょう。って母親はまだ元気ですが、施設に入って何年かで、もう敬語が抜けなくなりました。親から敬語で話しかけられるのは寂しいものです。人物の見分けがつかないため誰に対しても失礼のないように、とのスキルで、なるほど、と理解はしてるつもりでもね。なんとなく親しい人、との認識はあるみたい。

    それから次男くんの神対応。
    良く育てられた、本人の性格、その他に、距離感の遠さ、があるでしょうか。
    親子、ではないひとつ隔たりの先の関係ってことで。他人なら優しくできるのと同じ。
    ご機嫌を良くする秘密兵器として活用しましょう。

    • そらはな より:

      やまこさんへ♪
      あああああ!やまこさんに後光がさしてみえます。
      「親が叱ってくれるありがたさ」そんな風に思える時がくるのかなぁ。
      そして、親から敬語で話しかけられるというのも、寂しいものですね。
      その時になってみれば、過去を振り返ってありがたいと思えるのかもしれないですね。
      だからこそ、不満を言ってもどうしようもないのだから、できる役目を果たすことが私の使命かなぁ・・・と思ったりしています。
      ふふふっ。
      私には秘密兵器があると思えば、なんだか楽しいですね。
      モノは考えようだな・・・と、そう思いました。

  5. ぷらちな より:

    次男くんは中間子として過ごしてきて、そらはなさんとおばあちゃんとの関係を見て育ってこられた完成形ですね~
    ありがたい存在です。
    お母さんを将来的にはご自分で看たいと思っていらっしゃるようですが、双方にとってつらい経験にならないかと遠くから考えてしまいました。第三者が居てくだったら良いなあ。関係性も変わりますから。
    ブログを読んでいて感じるのがそらはなさんはまだパワーが溢れているし、とても親子関係が密接な気がして、そんなこと考えてしまいました。

    • そらはな より:

      ぷらちなさんへ♪
      介護は家族だけでは絶対無理だと思っています。
      私は、自分自身が母のような状態になったら施設に入ろうと思っていますが、母自身はそんな気はまったくなく、デイサービスに行くのさえ拒否しますからね。
      本当に、八方塞がりになってしまわないよう、常にいろんな情報は集めていないとダメですね。
      祖母と孫という関係は、お互い責任がないからうまくいくのかな・・・なんてことも考えました(^^;)

  6. きずつば より:

    こんばんは
    そらはなさんのお母様、私の母の症状にとっても似ていて、そらはなさんのお気持ち、自分の事と重ね合わせています。
    娘には失礼なことでもズバズバ言っちゃいます、私の母も!
    それが、ここ何年かは酷くなり、最近になって、あーこの言い方も認知症状のひとつなんだなぁって…頭では解るようになりました。 
    だからと言って、それを受け止め、気持ちを大きく優しく持って母に接すると良いんだ!と、思っても、8割はできません(^^;)
    でも2割はできるようになりました。
    今も努力はしてますが、なかなかできません。
    1週間に1~2度でも、母と長い時間一緒に居ると、とても疲れます。
    同じことを何度も聞く、私が言ったことはほとんど覚えていない、周りへの配慮が無くなり失礼な言葉を連発する、出来ないことをしようとする、作話が始まる、色々出てくる認知症状に、最初は聞き流し、否定せず、我慢する。
    でも、やはり、疲れます。
    母に気付かれないように溜め息をつきます。

    お友だちができて、食事も美味しくて、ここに居ると楽しいと言って、サービス付き高齢者住宅に入居してくれている母に、とても感謝してます。

    だから、母に会った時には、疲れるけど、優しくしようと思えます。
    ほんとは冷たい娘なのかもしれませんが。
    これで良いんだと、自分に言い聞かせて、自分の時間も楽しむことにしています。

    • そらはな より:

      きずつばさんへ♪
      お母さんは幸せですね。高齢者住宅で生きるという選択肢は、お母さんにとってもきずつばさんにとっても、お互いへの思いやりだと思います。
      全然「冷たい娘」ではないですよー。
      友人が介護施設で働いていますが、「親が施設に入ってからのほうが、みんな親子関係が良くなる」と話していました。
      自分にもやらなければならないことはたくさんありますから、限られた時間で「母と娘」の関係を築くのは理想的かなぁ・・・なんて思います。

  7. とも より:

    こんばんは。
    お寺さんが帰られた時に、座って挨拶って全然ありだと思いますよ。私も玄関とかで来客を見送る時、座ってご挨拶してるなー。立ったままは、逆に失礼かと思ってました。

    やはり来客などの環境の変化で、いつもよりしっかりしますよね。私も義父の時に、いつも変なこと言ってるのに、来客との会話が普通に終わると、良いことなんだけど心の中で何だよ〜〜。普通じゃーんと呆れてました。認知症の特徴とは知らずに。
    まして叱られちゃったりすると、普段対応に苦労しているそらはなさんにとっては、怒りの炎はメラメラ燃えますね。わかります、わかります。
    次男さんの神対応。上手にお母様と接してらっしゃいますね。若いのに立派です。

    実家の母も最近物忘れが多く、話したことを忘れることも増えました。元々おっちょこちょいでしたが、父から現在の母の様子を聞かされると、不安が膨らみます。
    いつかは何らかの病になり、両親をサポートする時が来るとわかっていても、実際離れてますし、素直に冷静に現実を受け止める自信は無いですね〜。義父の時とは全く違います。これが血を分けた親子なんですかね?考えると胸がズーンと重くなる感じ。なるようにしかならない!とも思ってはいますが。

    • そらはな より:

      ともさんへ♪
      ですよねー。私も座ってお辞儀をするという私なりの理由があるんですが、母は曲げない。母は強し!(笑)
      自分の親が、だんだんボケていく姿をみるのは、哀しいものがありますね。
      そして自分自身もいつそうなるか・・・ああ、怖ろしい。
      母がもっと毎日楽しそうにしていてくれたらいいのになぁ・・・って思うのですが、気力もなにもかも失っていて、だけども自分の意見は曲げない・・・。
      これが一番扱いにくいんですよねぇ。