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おかしいのはお母さん、あなたですよ、とは口が裂けても言えません

「あの医者、おかしくなったんじゃないか?」と言う母に
いやいや、おかしいのはお母さん、あなたですよ。とは口が裂けても言えません。

認知症の人に正論は通じないし、話を正そうとしても話がこじれるばかりですが、今回は凛として母の話を正しました。

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「あの医者、おかしくなった」

母が突然そんなことを言い出したのは、診察のため母をかかりつけ医に連れて行ってから3日後のこと。
そうか。母はおかしくなった医者に診察してもらったのか。
認知症である母の話をそっくりそのまま受け止めるのなら、「そうだね」と共感して、あとはとっとと母の部屋から出てしまうのが賢明です。

しかし、母は医者のなにを見て、そう感じたのだろう?
そんな興味がムクムクとわいてきて、私の口から出た言葉は「そうだね」ではなく「なんで?」。

こうなると話は堂々巡りで、この先数分、いや数十分は無意味なやりとりを繰り返すことになるというのに、やっぱり聞いてみたくなりました。

▪診察のために病院へ行ったのに医者はいなかった
▪診察もしないで薬だけよこした
▪いつも薬は2週間分出すのに、今回は4週間分もよこした
▪医者は病気で具合が悪いのではないだろうか

母の話をまとめると、こんな風に思っていたようです。
「医者がおかしくなった」というのは、医者が病気で具合が悪いのではないかという心配と不安が入り混じっての言葉でした。

ちなみに、母は病院でちゃんと医師の診察を受けています。
「聴診器あてて、血圧を測ってもらった」
診察室から出てきた直後、母は私にそう話していました。

薬もいつも4週間分もらっています。
2週間分というのは、まだ父が生きていた4年前のこと。
当時は、父が母の分の薬を2週間ごとに取りに行っていました。

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自己有利の法則

認知症の人は、なんでも自分の都合のいいように言う「自己有利の法則」というのがあります。
記憶がすっぽり抜け落ちてしまい、自分でもおかしいなと感じてはいるものの、それを認めたくないため、人のせいにしたり自分の都合のいいように解釈します。

母は、先生に診察してもらった記憶がすっぽり抜け落ちてしまったのでしょうね。
だけど病院へ行った記憶は断片的に残っている。
そして、家には新たにもらってきた薬が4週間分ある。

だから、
「病院には先生は不在で診察をしてもらえなかった」
「きっと先生は病気なのではないか?」
記憶が抜け落ちたことのつじつまを合わせるために、そんな風に思ったのでしょう。

でも、こんな時もそのまま受け止めて共感しても良いものでしょうか。

時には正すことも必要

先生はちゃんと病院にいました。
診察もして血圧も測ってもらいました。
先生は病気ではありません。
薬も、いつも4週間分出してもらっています。

母へは、きちんと事実を伝えました。
驚く母。
何度も言う私。

母は耳が遠いため、次第に声が大きくなる私。
このやり取りを数回繰り返し、最後に母はようやく認めてくれました。

「じゃあ、私が勘違いしてたんだね」という母の精一杯の譲歩。
勘違いじゃなくて認知症なんだよ。とは、母には絶対言えませんけどね。

認知症の母の言うことを正したところで、それは無意味なことだとわかっているけれど、先生が病気で診察もしてくれないという母の認識を正さないと、逆に母が不安になると思いました。

ケースバイケース、時と場合によります。

そういえば、先週姉が実家に訪ねてきたときも、そうでした。
仕事で不在だった私が、夕方帰宅したときには、母は姉が来たことは覚えていませんでした。
「今日、お姉さん来てたでしょ」と、私が尋ねると、母は「そういえば来ていた」と言いました。

そして「来てたけれど、玄関先ですぐに帰っていった」と付け加えました。
姉はいつも実家に来るときは、母と一緒にお昼ご飯を食べて数時間は滞在します。
その日もそうしたのに、母は覚えていなかったのです。

そして、覚えていないことのつじつまを合わせるために「すぐに帰った」と言ったのでしょう。

こんな母をみて、「脳って不思議だなぁ」と客観的に思えるようになるまで、3年かかりました。
長かったなぁ。
苦しかったなぁ。
だけど、今はたいていのことには穏やかでいられます。
父が亡くなり、今年で4年目を迎えます。

 

コメント

  1. あっこ より:

    こんばんは!
    我を通す、思い込み、都合の悪いことは誤魔化す….認知症じゃなくても
    高齢者にはありがちですよね。
    共感する、適当に聞き流す、それができたらどんなに楽でしょうね^_^
    自分に余裕がない時は いつまでこんな状況が続くのかな、なんてふと思ってしまいます。

    • そらはな より:

      あっこさんへ♪
      こんにちは(#^^#)
      認知症は仕方がないことなんだと思います。
      ただ・・・うちの母の場合、もう少しかわいげのある言い方をすればいいのになぁ・・・といつも思っています。
      私は、そうならないように気を付けたいけれど、それがわからなくなるのが認知症なんですよねぇ・・・。