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【認知症の母とのかかわり方】あんたが覚えておけ!と言われて、嗚呼私は認知症になりたい

体験したことを丸ごとすっぽり忘れてしまうのが認知症です。
例えば、昨日の晩ごはん何食べたっけ?と思い出せない私は、単なる(年相応の?)物忘れなのですが、晩ごはんを食べたことすら覚えていないのがうちの母。

要介護1の母に、お金の話をすると非常にやっかいでめんどうなことになるので、私は極力避けているのですが、時に避けては通れないこともあります。

今回は、町内会費の巻き。

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町内組当番と町内費

うちの町内の世帯数はかなり多いため、町内の中でさらに組分けをし、その組の中で当番を決めて町内会の仕事を順番に行っています。
当番期間は1年間で、その間に町内費の集金や広報などの配布をします。

町内費は月300円。
通常3か月ごとに集金をするのですが、家に不在がちな人は1年分をまとめて支払ったりもします。
我が家も昨年は1年分をまとめて支払いました。

自宅には母が居るとはいえ、耳が遠くテレビを大音量でつけているので、玄関でチャイムを鳴らしても大声で叫んでも聞こえないことが多々あります。
また、認知症である母にはなるべくお金に関することにはタッチしてほしくありません。

いろいろめんどうなことになるというのは、父が亡くなってから嫌と言うほど学びましたからね。

そんなある日、お向かいに住むMさんが町内費を集めにやってきました。

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母はなにもわからないけどわかったふりはする

私、畑で這いつくばっていたんですよ。
たしか大根の芽をなぎ倒すネキリムシを探していたとか、そんな感じです。
まぁ、これはどうでもいいことなんですが。

 

「こんにちはー」と声がして、顔をあげるとMさんが実家の玄関から出てきたところでした。
いくら玄関で叫んでも誰も出てこないので、帰ろうとしたら畑にいる私を見つけたというわけです。

町内費の集金に来たMさんと玄関先でお話をしていたら、母がいつの間にか玄関に立っていたので私もMさんもびっくり。
それから3人で世間話をしました。

Mさんのご主人は認知症で施設に入居していること。
70代後半のMさんは、来春隣町に住む息子さん一家のところで暮らす予定でいること。
Mさんのお宅も空き家になってしまうこと。
そして最後に町内費が4月から400円に値上がったことなど、など。

1年分を支払おうとしたら、4月~6月分の3か月分はすでに払われているというではありませんか。
私が不在の時に、母が3か月分を支払ったようです。
なので残りの9か月分×400円=3,600円を払いました。

私とMさんとの会話の最中、母はまるで上の空といった表情を浮かべていました。
会話の内容が理解できないからです。

ところが、Mさんが「私も腰が痛くてねぇ」とか「私も歳だから」といった類の話をすると、すかさず母がまるで合いの手でも入れるように話しに入ってくるのです。
「それでもあなたはこうして(町内費集めに)来られるんだから、たいしたもんだ!」と。

母は何度も「たいしたもんだ!」と繰り返し、そうしてMさんは帰っていきました。
そしてすぐに母は言いました。

「あれ、誰だ?」と。

何十年来のお付き合いのあるお向かいさんも忘れた

「向かいのMさんだよ」と、母に言うと、母は驚いたように言いました。
「あれがMさん!?風貌が変わってまったくわからないよ。何十年も会ってないとわからなくなるもんだ」と。

うーん。
6月に町内費を集金に来た時、払ったのは母だからその時も会ってるよねぇ。
ならば母は、誰だかわからない人に「たいしたもんだ」と合いの手を入れていたのか。

ま、しかたがありません。
母は認知症ですから。

昔の容姿のMさんのことは鮮明に覚えていて、3か月前に会ったMさんのことはまるで覚えていないのね。

ま、しかたがりません。
これが認知症ですから。

だから、今日Mさんが町内費を集めにきたことも、きっとすぐに忘れるでしょう。
それでいいのだ。
それが認知症なのだから。

ところが母は、すぐには忘れなかったのですよ、町内費のことを。

お金に固執するのはなぜ?

「町内費、なんで3,600円なんだ?」
母は、ずーっとここに引っかかっていました。

400円に値上がりしたこと、3か月分はすでに払っていたから、残りの9か月分を払ったこと、それを母に言うと、一度は納得します。
だけど、数分後にはまた同じことを聞くのです。

認知症って体験したことを丸ごと忘れるんだよね?
ならば町内費を集金に来たことも、もう忘れてくれよぉー。
何十年とお付き合いしているMさんのことは忘れているのに、なんで3,600円の集金は覚えているんだよぉー。

母がここに嫁いで半世紀以上が過ぎ、長いこと町内費は300円だったという記憶だけは残っているのんだよね?
300円×9か月=2,700円という計算も、まだしっかり計算できるんだよね?
だけど母が納得できないことは、町内費が400円になったってことなんだよね?

認知症は新しいことは覚えられないと言いますから、「町内費は300円」だという考えから抜けられない母だったのです。

自分が予想する答えだと納得する

先日帰省した長男が話していたことを思い出しました。

長男が母の部屋へ行って近況報告をすると、毎度必ず聞かれることがあります。
それは、「一人暮らしをしているのか?」ということと、「自炊しているのか?」ということ。

長男が「自炊している」と話すと、母は必ず言い返すそうです。
「男一人暮らしでご飯なんて作らないでしょ?ほとんど外食でしょ!」と。

そうして一通り話を終えると、次に必ず母が聞くのが
「一人暮らしをしているのか?」と「自炊しているのか?」
これを延々と繰り返すのです。

最初の質問で長男は「自炊しているよ」と答え、次の質問では「自炊と外食と半々くらいかなぁ」と答え、何度も同じことを聞かれるので最後にめんどくさくなって「ほとんど外食だね」と答えたそう。

すると母がとても満足そうに「そうでしょう、そうでしょう」と言って、その後はその質問をすることはなかったそうです。

長男いわく、認知症の人は自分が予想する答えが返ってくると満足して安心するんじゃないかなぁ、とのこと。
私も長男の話を聞いて、たしかにそうかもねぇ・・・と思いました。

母が自分の中で組み立てた答えだと安心して受容できるんでしょうね。
だけど、予想外の答えだとそれが不安になって、何度も何度も同じことを聞く。

つまり認知症の人との会話は、例え嘘でもその人が安心できる答えを返すのが、正解なんじゃないだろうか・・・。

あんたが覚えておけばいいでしょ!

私もこの3年、母と接してきて適度に受け流せるようにもなったし、余計なことは一切話さないようにしているので、とりあえずおだやかな時は流れています。

だけど、時々日常生活の中でちょっと変化のある何かがあると、とたんに母はめんどくさくなります。

「ちょっと?あの人、3,600円持っていかなかった?なんで3,600円なんだ?おかしくない?」
同じ質問も5回目となったとき、私もいい加減うんざりしてきて、ついつい捨てセリフのように言いました。

「メモに書いておけば?そんなに気になるんなら!」と。

すると母、なんて言ったと思います?

「そんなめんどくさいことするか!あんたが覚えておけばいいでしょ!」

だって!

嗚呼。
私も認知症になって何もかも忘れたい・・・。

 

コメント

  1. このちな より:

    そらはなさんこんにちは読んでいてなんだか気が遠くなるようなお話だなあと思いました いくら優しく接しようと思っていても これじゃあもう ヘトヘトになってしまいますよね 認知症ってこんな事になってしまうんですね いくら訂正しても説明しても 全然効果がないんですものね 海岸に波打ち際に 砂の山を築いている様な虚しい気持ちがします 毎日を履いてをしているそらはなさんのご苦労がしみじみと分かるような 今日のお話だと思いました

    • そらはな より:

      このちなさんへ♪
      毎日のことですから、適当にスルーする術をみにつけながらやっていきたいと思います。
      そうでなければ、身が持たない(*_*)

  2. Kuma kuma より:

    こんにちは
    3ヶ月分払ったことは、聞いてるんですね。そこも分からなければ、300×12=3600で済んだのでしょうけども。うちは、旦那を介して聞こえて来る話で済んでます。ただ、やはり、財布が無くなったりすると、私が持ち去ったと言い、見つかると、ここに隠して置いてった。って、なってます(笑)都合良く解釈して、どんどん話が作られてます。義母の話をどれくらいの人が信じているのだろう⁉️。やましいことしていないのでへっちゃらですが~。これも、離れているおかげ、そらはなさん、頑張らずにがんばれー

    • そらはな より:

      Kuma kumaさんへ♪
      お!なるほど!
      300円×12ヶ月という教え方もあったか!
      そのほうが母にとってはわかりやすくすっきりしたかもしれませんね。
      何を言われても気にしない、なんでも受け流すのが得策でしょうけど、人間だもの、そう簡単にはいきませんよね。
      がんばらずにがんばります^_^

  3. あべま より:

    息子さんも優しいですね。
    若いのに認知症の人への接し方を知っていて。

    認知症は病気です。そう思うしかありませんよね。

    「その人が安心できる答えを返すのが正解」

    深くうなずかされます。

    • そらはな より:

      あべまさんへ♪
      病気なんですよねぇ。
      わかっちゃいるけど、あまりにも強気でこられると、こちらが弱気になってしまいます。
      あまり真に受けずにテキトーに。
      これが1番ですね。

  4. とも より:

    固執しますよね〜!
    うちは実印とキャッシュカードに囚われております。
    いつも無くなったと長時間探しているようです。自分が片付けたところを忘れているだけなんですが、、、。

    先日は、ゴミと一緒に捨ててしまったかも。とか、ちょっと外に出たら泥棒に盗られたとか。自分の不注意で洗濯物の中に入れてしまってました。

    1週間に何度もだと、父もうんざりしてます。病気だから受け流してね。と、説明しますが、毎度愚痴られると私もうんざりです。
    2人とも可哀想に思いつつ、頻繁には帰れないので困ってます。

    病院に今の状況を手紙でお知らせしようと思ってます。デイサービスも嫌。にこやかで優しかった母が頑固者になったことが1番悲しいですね。

    • そらはな より:

      ともさんへ♪
      うちの母は、父が亡くなったその年は、通帳にものすごく固執していましたが、今では放置状態です。
      それでも自分の引き出しにしっかりしまっています(^-^;
      ともさんのお父様は、大変ですね。
      ご自身もやりたいことや楽しみたいことがたくさんあるのでしょうけど、お母様のことも面倒をみなければならない。
      ストレスもたまりますよね。
      こうやってご両親のことを気にかけているともさんは、十分手を尽くしていると思いますよ。