仮住まいで淹れられなかった一杯が、私の暮らしを変える

昨年、ネスカフェ バリスタ Slim を購入し、その便利さに驚きました。
ボタンを押せば、数秒後には熱々のお湯が細く勢いよく落ちてきます。

朝のぼんやりした時間でも、すぐに一杯が用意できる。
スティック飲料は自然に混ざり、ティーバッグもよく抽出される。
コーヒーマシンなのに、私がいちばん使っているのは「お湯だけ出す」機能です。

そのおかげで、電気ケトルの出番はほとんどなくなりました。

それでも手放せなかった“儀式の道具”

それでも電気ケトルを手放さなかったのは、休日の午後にハンドドリップをするためです。

ハンドドリップをするためのドリップポット

豆を蒸らす時間。
最初の一滴が落ちる静けさ。
ゆっくりと立ち上る香り。

あの時間は、コーヒーを飲むためというより、一週間の自分をほどくための、小さな儀式でした。

仮住まいで淹れられなかった理由

仮住まいにも電気ケトルを持ってきました。
けれど、ここでは一度もハンドドリップをしていません。

キッチンが狭いこと。
動線が落ち着かないこと。
理由はいくつかありますが、本当はそれだけではありません。

玄関ドアを開けた瞬間に触れる空気。
嫌な匂いではないのに、我が家の匂いではない。
ここで誰かが暮らしていた気配が、まだ薄く残っているのを感じます。

部屋はきれいなのに、空気だけがよそよそしい。
その中に、私はうまく自分を置けないでいます。

だから、ハンドドリップをする気にならないのです。
あの儀式は、自分の場所でしか成り立たないのだと気づきました。

減築でつくる“自分の輪郭が残る家”

減築リノベーションを選んだのは、広さを求めたからではありません。

欲しいのは、ただ広い空間ではなく、自分の輪郭がきちんと残る場所。

新居は、これまで暮らしてきた家を減築して生まれ変わります。
壁の位置は変わり、部屋も減る。
それでも、長年染み込んだ空気は消えないはずです。

午後の光が落ちる角度。
雨の日に静かに響く屋根の音。

そういう“暮らしの記憶”が、形を変えても残っている家がいい。

真新しい家が欲しいわけでもなく、昔のままに戻りたいわけでもない。
馴染んだ空気が、少しだけ形を変えて、どこか懐かしくて、でもまだ見慣れない。

そんな中で、これからの暮らしを築いていく。
そんな家が欲しいのです。

【バリスタスリムの評判は本当?】8年使ったバリスタ50から買い替えたリアルな感想
8年近く使っていた「ネスカフェ バリスタ 50フィフティ」が、ある日突然、水漏れを起こしました。コーヒーを淹れると、カッ...

始まりの一杯を思い描くだけで

新居に戻った最初の休日の午後、
私はきっとハンドドリップをするでしょう。

庭のローズマリーでコーヒーを淹れたい

お湯を沸かし、ポットに移し、ゆっくりと円を描く。
その一杯は、ただのコーヒーではありません。

これからの時間を、ここで積み重ねていくという、小さな宣言となるでしょう。

懐かしさの上に、新しい暮らしを重ねていく、その始まりの一杯。

いまはまだ、仮住まいの空気の中にいるけれど、あの一杯を思い描くだけで、少しだけ背筋が伸びるのです。

 

 

 

コメント