認知症の母の暮らしに必要なものは思い出作りではない

お正月は姉一家が遊びに来て、毎年恒例の家族そろって食事会を行いました。
姉の息子たち2人に、我が家の子どもたち3人。
母は、孫5人に囲まれ楽しいひと時を過ごしました。

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最初から最後まで「あれは誰だ?」と聞き続ける母

「楽しいひと時を過ごした」と言ってみたものの、そう思っているのは私であり、母にとってはそうではありませんでした。

姉の息子たち2人が我が家に遊びに来るのは、年に1度か2度。
そして我が家の子どもたちも、3人が一同に集まるのは年に1度ほど。

つまり、ふだん会うことのない孫たち5人が急に目の前に現れたのだから、認知症で記憶障害の進んだ母にとっては混乱の材料でしかありません。

姉夫婦と息子2人、私たち夫婦と子どもたち3人、そして母を合わせて総勢10名で囲んだ食卓で、母はずーっと同じ言葉を繰り返しました。

姉の長男A男と次男B男に対して
「どっちがA男だ?」「あれは誰だ?」と何度も何度も聞くのです。

みんな母が認知症であることはわかっていますから、そのたびに
「右側がA男だよ」
「黒い服を着ているのがA男だよ」
「白い服がB男」
と、その都度答えますが、それが1時間以上も続くとさすがにいちいち答える人はいなくなりました。

それでも母は、まるで今初めて質問するように
「どっちがA男だ?」「あれは誰だ?」と繰り返しました。

この状態は、3時間も続きました。

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体験を丸ごと忘れる

姉一家が我が家にいたのは5時間ほど。

最初の3時間は「あれは誰だ?」「どっちがA男だ?」とずーっと聞き続け、後半の2時間は、孫たちがおみやげに買ってきてくれたお菓子をいただき、食器を洗ったり片づけをしたりと、あれこれ動いていた母。

最後は、帰る姉一家を見送るためにわざわざ外に出てきました。

なのに。
翌日には姉たちが来たことを、何一つ覚えていなかったんです。
姉や孫が買ってきたお菓子は、いつのまにやら母が全部食べていて、そんな物証があるのにもかかわらず、姉一家がお正月に来たことはまるで覚えていない。

母は、あのお土産のお菓子をいったい誰が持ってきたものだと思って食べていたんだろう?
そんなことに考えを及ばすほど、考えることができないのが認知症なのでしょうけど。

認知症は、体験したことを丸ごとすっぽり忘れると言いますが、まさにその通りだと思いました。

もの忘れが進んだ母への最善策

母の物忘れのレベルは、中等度まで進んだと思われます。
以前は、忘れないようにとメモをとり、一生懸命記憶をたどっていたものでしたが、今ではそのメモを書いたことすら忘れてしまいます。
メモの活用が難しくなってきました。

「毎日単調で退屈だろう」とか「脳に刺激を与えるためにいろいろなところへ連れていこう」などと思ったこともありましたが、体験したことを丸ごと忘れてしまう今となっては、逆効果です。
昔から身体に染みついた習慣で今を懸命に生きている母にとって、新しい変化は混乱を招くばかりです。

「思い出作りをしてあげよう」などという考えは、私の気持ちの押し付けでしかありません。
母にこういうことをしてやったという、自己満足に過ぎないのです。

もの忘れはあるけれど、母が毎日の生活パターンを乱すことなく送ることができるようにすること
これが母にとっての最善の対応なのだと、母をみていて心底そう思うようになりました。

毎日毎日、来る日も来る日も同じでいい。
朝起きて、ご飯を食べて、テレビをみて、お風呂に入って眠る。
この生活リズムを崩さないようにしてやることが、私の務め。

今、この瞬間を生きている母にとって、先の予定や約束なんてなんの意味もないのですから。
いずれ、これらの生活も難しくなる時がきますが、少しでも長く母が今の生活を送ることができますように。

「歳をとればみんなこうなるんだ!あんたも覚えておけよっ!」
という母の捨て台詞にも、笑って聞き流せるようになりました。

 

コメント

  1. おにむすめ より:

    ものすごく、心にしみました。

    何年も前からブログを読ませていただいています。
    今、この瞬間を生きている母・・・まさにそうですね。

    • そらはな より:

      おにむすめさんへ♪
      親子であるからこそ、認知症になってしまった親とのかかわり方は難しいと感じています。
      他人であればもっと割り切って付き合うことができるのにな・・・とも思います。
      毎日同じことの繰り返しでいいんだ・・・と思えるようになるまで3年もかかりました。

  2. あべま より:

    ヘルパーをしていた経験上、認知症の方は喜怒哀楽を表すことができるし、感じる取ることもできます。

    できることなら、楽しい、穏やかな気持ちで毎日を過ごしてもらいたいですね。

    • そらはな より:

      あべまさんへ♪
      認知症になっても感情は残るっていいますもんね。
      お互いのためにも、気持ちよく向き合っていきたい。
      だから、母が認知症だと認めるところから始めなければならないのだと思いました。

  3. でぶねこ より:

    そらはなさん、お久しぶりです! でぶねこです^^
    あ~、また私と同じだわ~と思い、コメントしました(笑

    そうそう! 毎日のリズムを整えてあげることが、自分にできることなんですよね♪
    私もそう思うようになって、あえて新しいことをしないでもいいんだな~と考えるようになりました。
    義母は正月に来てくれた義弟家族のことを、帰宅後30分で忘れてました(笑
    今日は誕生日88歳「米寿」なのですが、先日病院の待合で隣に座った人に83歳だと申しておりました。あえて何かをしなくとも、いつもと同じ一日なら、それが一番です!

    私事ですが、実母のほうは認知症が一気にひどくなり、現在入院3か月、まもなく施設へ入所となります。義母は介護することができるのに、実母を介護することができず、ずっと悩んでいたのがストレスとなったんでしょう、年末に大腸憩室炎になり入院したほうがいいと言われてしまいました。(現在はもうなんともなく、元気です!^^)
    負の連鎖のスパイラルにならないよう、自分の健康管理には注意しないといけないといけないですね。

    そらはなさん、いつもブログを楽しく拝見させていただいています。
    それはそらはなさんのお人柄がとてもよく、読んでいて心地いいからだと思います。
    自分の心を平常に、毎日のリズムを崩さずに過ごすことが、家族の健康につながるんだな~ということを、改めて考えさせてくれたそらはなさんのブログに、感謝です!!!
    いつもありがとうございます!

    • そらはな より:

      でぶねこさんへ♪
      お義母さんのことを介護しつつ、実家のお母さんのことをみてあげることができない葛藤は、同じような立場の方ならみなさんそう思うんでしょうね。
      子育てが一段落すると、今度は親の介護。
      そういう年齢になったのだなぁと思います。
      親のこと、子どものこともありますが、やっぱり私は自分の人生を楽しく生きたいと思っているので、やれることはどんどんやっていきたいと思います。
      早く春になって、畑に種を撒きたい〜!

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