深緑の十和田湖奥入瀬渓流を散策してきました。
美しい渓流とブナの原生林を、お散歩気分で気軽に歩けるところは、他にはないのではないでしょうか。
今回は、奥入瀬渓流の中流コースを1時間かけて歩きました。
マイナスイオンを浴びながら、次々に変わりゆく渓流の景色は、本当に癒しの空間でした。
十和田湖
十和田湖は秋田県と青森県にまたがる湖で、最大水深は326.8m。
東京タワー(333m)を沈めると、最上部の避雷針が湖面に顔を出すくらいです。(憶測)
地図でみると小さな湖のようにも見えますが、東京の山手線の内回りと同じくらいの面積ですから、なかなか大きな湖ですよね。
実は十和田湖は、噴火によって陥没してできた湖で、なんと今も火山として監視対象となっています。
もしも噴火した際には、湖でも津波が発生するそうですよ。
そんな十和田湖から流れる川が奥入瀬川。
十和田湖から約14kmの散策路は、奥入瀬渓流として季節ごとに美しい渓流美をみせてくれます。
どんなに有名なカメラマンの撮った写真よりも、自分の足で歩き、自分の目でみる奥入瀬渓流の美しさはため息が出るほど美しい。
今まで奥入瀬渓流には何度か行ったことがある私ですが、歩いて散策したのは今回が初めてでした。
奥入瀬渓流お手軽1時間散歩コース
奥入瀬渓流は、十和田湖の子ノ口(ねのくち)から約14kmの遊歩道が続く散策路ですが、今回は奥入瀬で一番有名な流れの名所が集まる中流を歩きました。
奥入瀬渓流散策のポイントは、下流から上流に向かって歩くこと。
そうすることで、川の流れが常に自分に向かって流れてくるアクティブな姿を見ることができます。
また、水しぶきも自分に向かって飛んでくるので、ダイナミックな流れを満喫できます。
さらに、上流である十和田湖に向かって歩くと、常に太陽が自分の正面から照らしてくれるので、原生林の葉っぱが透かされ美しい模様をみることができるます。
そんな理由から、奥入瀬渓流はぜひとも下流から上流へ向かって散策することがおすすめです。
私が歩いたコースは、石ヶ戸から雲井の滝までの約2.8kmです。
街中だったら30分くらいで歩ける距離ですが、渓流散策ですから、ゆっくりじっくり時には立ち止まってのお散歩なので、1時間ちょっとかかりました。
スタートした石ヶ戸には、大きな石があります。
「ケ戸」とは小屋を意味する言葉で、石でできた小屋、つまり岩屋です。
昔、鬼神のお松という美女の盗賊がここをすみかとしていたという伝説があるそうですよ。
渓流散策ですから、トレッキングシューズなどを履いたほうが良いのですが、奥入瀬渓流の遊歩道は傾斜が本当にゆるやか。
上流に向かって歩きますが、上り坂と感じることはほとんどなく、平坦な道を歩いているような感覚です。
私も歩きやすい靴で来たのですが、あいにくの小雨模様で遊歩道もぬかるんでいたので、ホテルから長靴をお借りしました。
そうなのです。
借りた長靴で歩ける渓流散策なのです。
岩の上に根を張る木は、まるで天空の城ラピュタを想像させます。
自然の美しさを、こんなに間近で見ることができるなんて、なんとも贅沢な空間です。
そんな奥入瀬渓流ですが、最初は火山が噴火した場所ですから、岩しかありませんでした。
ある時、十和田湖の一部が決壊し、それが奥入瀬川となりました。
十和田湖の豊富な水は、岩肌に苔が生えるのに最も適した環境を作りました。
その苔が進化し、シダ植物が誕生しました。
シダ植物は、上へ上への太陽の光を求めて伸びることで、針葉樹へと進化しました。
針葉樹は、効率よく光合成を得るために、広葉樹へと進化しました。
広葉樹は、効率よく子孫を残すために、色を付けた草花へと進化し、花粉を虫たちに運んでもらうようになりました。
岩だらけの噴火跡地が、今ではこんなに豊かな緑に囲まれているのですから、奥入瀬渓流の散策では、植物の進化についても学ぶことができます。
渓流の途中には、まだ若くて細いブナの木々がみられる場所があります。
平成11年の土砂崩れにより一部の森が失われた場所です。
そこから新しい木々が芽吹き、また新たな森を再生中なのです。
長い歳月をかけて出来上がった渓流の森に、また新たな植物が芽吹く様子は、地球の誕生もこういったことを繰り返し行われてきたのかと、想像を巡らすことができ、なんだか感慨深い。
さらに、奥入瀬渓流の川の底は基本的に岩なので、雨が降ったあとでも濁ることなく、きれいな水のままです。
これがまた、奥入瀬渓流の魅力でもあるんですね。
雨に濡れた葉っぱは、つややかで美しい景色をみせてくれましたが、太陽に透ける葉っぱも見たかったなぁ。
でもね、近くにいたご夫婦の会話が聞こえてきたんですよ。
「奥入瀬渓流は、雨の日に来るのが一番いい」と。
奥入瀬渓流の晴れた日の写真は、どこでも目にすることができるけれど、雨の日の様子の写真はなかなか見ることができない。
だから、自分の目で見る雨の風景が最も貴重であり、美しいんだと。
なんてステキな考え方!
私も、目の前に広がる今、この瞬間の景色を心に刻もうと思いました。
1秒ごとに変わっていく景色は、季節が変わり、お天気が変わり、時間帯が変わることで、まったく別の風景を魅せてくれることでしょう。
だからこそ、奥入瀬渓流は何度でも訪れたくなるそんな場所です。
石ケ戸から雲井の滝までの心地よい1時間の散策コースでした。
なお、奥入瀬渓流は遊歩道に平行して車道も走っています。
近年、車の騒音や排気ガスの問題もあり、せっかくのブナと渓流の散策も、残念に思うこともあります。
長い距離を歩けない人にとっては、車をちょっと停めて、その場の景色をちょっと楽しむには、ちょうど良いのかもしれませんけどね。
紅葉の時期には、奥入瀬渓流沿いは大渋滞となるので、通行止めになります。
そこで、現在奥入瀬渓流を迂回するバイパスを建設中で、それが完成したら奥入瀬渓流の車道は完全に一般車は進入禁止にするそうですよ。
バイパスが完成するのは10年後だそうですから、その時の奥入瀬渓流は本当に幻想的なブナの森と美しい渓流、そして苔が作り出す神秘的な空間が誕生することでしょう。
その時にはまたぜひ訪ねたい。いやいや、その前にもまた来たい。
すばらしい渓流散策でした。
渓流散策の前に星野リゾート奥入瀬渓流ホテルでランチをいただきました。
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