秋田県内にこんなに清らかで美しい湧水があるなんて、知らなかったんですよ。
全国名水100選にも選ばれているというのに。
その湧水もひとつやふたつではなく、100箇所以上もあるというのに。
秋田県美郷町にある六郷湧水群を、地元のボランティアガイドさんに案内してもらいました。
美郷町六郷地区(みさとちょうろくごうちく)の湧水
湧水は、地下水が自然に地上に湧き出してきているもの。
地下水の水圧や地質条件が満たされないと湧水とはならないので、どこにでもあるわけではありません。
しかし、秋田県美郷町には126箇所にも及ぶ湧水があるというではありませんか。
中でも六郷地区には60を超える清水が存在し、全国名水百選にも選定されています。
●昭和60年:環境庁の「名水百選」
●平成7年:国土庁の「水の郷百選」
●平成7年:林野庁の「水源の森百選」
●平成12年:建設大臣の「甦る水百選」
●平成14年:読売新聞社の「遊歩百選」
に選定されています。
(美郷町パンフレットより)
六郷地区がいかに美しい湧水の町なのかということが、よくわかります。
そして、日本はなんでも百個、選ぶのが好きなのだということもよくわかります。
六郷地区湧水(清水)散策
六郷地区清水散策の出発地点は、美郷町観光情報センター。
ここで観光案内人の申し込みができます。
観光案内人は、すべて町のボランティアによるもの。
徒歩で1時間かけて案内してくれ、これが無料なんです。
だから美郷町の湧水での町おこしの意気込みがよーく伝わってきますよね。
60箇所もある清水を全部見て回ることは不可能なので、主な清水8箇所を案内してもらいました。
②大きな桑の木
③ハタチや清水
④久米清水
⑤御台所清水・山田家清水
⑥キャペコ清水
⑦観光休憩所
⑧諏訪清水
⑨藤清水
⑩カマクラ畑「竹うち」会場
⑪水道料金のメーター
⑫ニテコ清水
1.美郷町観光情報センター
美郷町観光情報センター内で観光案内人の方と待ち合わせ。
観光マップや各種パンフレットがそろっているので、初めて訪れる場合は最初にここへ行くとよいですよね。
この場所のすぐお隣は、寺町通りで6件のお寺が道路に面して並んでいます。
かつて、この町を治めた六郷氏や佐竹氏は、積極的にお寺を招致したといいます。
年に2回、お寺巡りツアーなるものも開催されていて、寺宝や庭園拝観、鐘つき体験などをしたあとは、ご住職のありがたいお話も聞けるらしい。
機会があれば、ぜひとも参加したいと思いました。
2.大きな桑の木
美郷町は、農業を中心に栄えてきた町ですが、水の得にくい土地では、桑を育て養蚕業も積極的に行ってきました。
現在はすべて廃業してしまったそうですが、その名残である大きな桑の木が見られます。
3.ハタチや清水
ハタチや酒店の敷地内に湧く清水です。
隅からコンコンとお水が湧いているのを見ることができます。
湧水の水温は10℃くらいなんだとか。
果物や飲み物を入れておくと、とってもよく冷えるんだって。
この日の気温は28℃。歩くと汗がじんわり出てきます。
しかし清水に手を入れるととっても冷たくて、5秒も入れていると手が冷たくて痺れる感じに。
町の清水のあちこちには、氷河期の生き残りとされる「イバラトミヨ」が生息していますが、その姿をみることはなかなか難しい。
でも、ハタチやさんの店内では、イバラトミヨを水槽に入れて飼っているので、ここで間近に見ることができます。
絶滅危惧種でもあるイバラトミヨは、地元では「ハリザッコ」と呼ばれています。
体長5~6cmほど。体にトゲトゲがあって、なかなか太古なお顔をしておりました。
4.久米清水
この清水の近くに久米さんという家があり、自分の家の水屋のように使っていたことから、久米清水と呼ばれるようになったとか。
この命名のしかたって・・・(笑)。
なんだか悪意を感じるのは私だけですかね?
石の下から、ポコポコと水が湧いています。
しかし、久米さんは、今何処?
5.御台所清水・山田家清水
こちらは御台所清水。
秋田藩主佐竹氏が炊事やお茶の水に使用していたそうな。
清水は、冬になると渇水となるところもありますが、この御台所清水は年中枯れることがないため、周辺に住む方たちも生活用水として実際に使っています。
それにしても水面が鏡のように美しい。
ここでハリザッコ発見!
ちゃんと生息してるんですねぇ。
御台所清水の近くには山田家清水があります。
昔山田さんという方が住んでいた場所にある清水ですが、現在は休憩場所となっています。
写真撮り忘れ。
6.キャペコ清水
キャペコってなんやねん?と、同じ秋田県人でありながら、わかりませんでした。
なお、地元のボランティアガイドさんも「キャペコなんて言ったことない」と話していたので、もはや死語となった昔の言葉なんですかね。
キャペコ清水は、全部で3つあります。
これがアレで・・・。
こっちが右側の袋で←袋って・・・。
こっちが左側の袋か?←袋って・・・。
文字で書くとなんだかヒワイだけれど、実際の清水は透き通るような美しさ。
だから、キャペコってネーミングおかしいでしょうよ!
7.観光休憩所
観光休憩所でひと休みです。
ここでは、美郷町のおいしい水で淹れてくれた緑茶が無料でいただけます。
おいしい。たしかにおいしいお茶でしたが、暑い日に熱いお茶で、汗が出る、出る。
番外編:御伊勢堂川
突如現れた川のような用水路のような水の流れは、御伊勢堂川と呼ばれています。
これも、湧水がどんどんあふれ出てきて、川のようになったのだとか。
毎年8月第一日曜日に行われる「舟ッコ流し」は、お伊勢堂川に笹竹や短冊に彩られた舟ッコを浮かべて引くお祭り。
およそ300年続く六郷地区の子どもたちの七夕行事なんだそうですよ。
きれいな水だから、子どもたちも安心してお祭りに参加できますね。
8.諏訪清水
諏訪神社の境内にあります。
ここには4つの清水があり、近くを流れる御伊勢堂川と合わせて「一心」と見えることから、「一心清水」とも呼ばれるそう。
うーん。
ドローンでも飛ばさない限り、一心とは見えません。
9.藤清水
近くにある藤の花が、水面に映える様子はとても美しいそうです。
藤の花の季節には、見ごたえあるでしょうね。
インスタ映え映えスポットですね。(インスタやってないけど)
10.カマクラ畑竹うち会場
国指定重要無形民俗文化財である六郷のカマクラ(竹うち)会場となるのがこちら。
2月中旬に行われる小正月行事で、南軍と北軍に分かれた男たちが、長い竹の棒(7~8M)でひたすらバンバン、バンバン、バンバン、バンバンと打ち合うまつり。
テレビでその様子は見たことがありますが、思っていたよりも狭い会場だなぁという印象。
右側に見える8本の柱が組まれた場所。
審査員がこの上に立って、勝負の行方を見るのだとか。
2月には、この上まで雪が積もっているらしいから、豪雪地帯でもあるんですね。
11.水道メーター
清水を案内してもらっているうちに、あちこちの家の前に必ず設置されている物に気が付きました。
映画スターウォーズに出てくる白い姿の兵士に見えてしょうがない。
これ、水道メーターだそうです。
昔は六郷地区は、水道無料の汲み放題、飲み放題だったらしいのですが、その後の町村合併により水道料金も他の地区と統一されてしまったそうで、家の前には後からつけたような水道メーターが設置されているというわけ。
ちょっとめずらしい光景だなぁと思ったので、写真におさめました。
12.ニテコ清水
清水の案内のゴール地点が、ニテコ清水。
アイヌ語のニタイ(森林)とコツ(水たまり)が名前の由来。
子どもたちが、この清水で水浴びしていました。
奥には似手古神社があり、樹齢100年を超えるケヤキの木も。
そしてお隣にはニテコ名水庵というお食事処。
やっぱりその町のことは、その町の住人に案内してもらうのが一番ですね。
1時間の有意義な清水巡りでした。
六郷清水巡りを終えて
六郷地区は、たくさんの湧水が点在する美しい町。
湧水は、地元住民が今も生活用水として使っています。
周囲には民家あり、畑あり、なんというか田舎のおばあちゃんちに遊びにきたような感覚です。
観光地化は、まだあまりされていない印象を受けました。
ただ、道路にはこのように清水の案内が埋め込まれていて、この道路を整備したのもほんの2~3年前とのこと。
湧水群のパンフレットやポスターは、町のいろんなところにたくさんあって、湧水で町おこしをしていこうとする意気込みはビンビン伝わってきました。
都会の喧騒を忘れて、のんびり田舎町を散策するにはとても良い場所です。
清水散策をする前に、ニテコ名水庵で昼食。天ぷらそうめんセット750円。
おまかせデザート390円は、サクランボとティラミス。
飲み物は自分で選ぶことができます。これはアイスコーヒー。
日曜日のせいか、お店は激混み。
友人が予約していてくれたおかげで、すんなり店内に入ることができましたが、お店の前には7~8組が順番待ちしていて驚きました。
だって秋田の田舎で、こんな行列してまでお昼を食べることってないんだもの。
1時間の散策を終えたあと、ニテコ名水庵の隣にある「手作り工房湧子ちゃん」でニテコ巨峰サイダー購入。175円。
ノーマルのニテコサイダーに比べて、すっきりした味わいでした。
私が住んでいるところも田舎ですが、生活の中に湧水がある風景は見たことがなかったので、とても新鮮でした。
なお、六郷の湧水群の見ごろは5月~9月。
10月以降は渇水期となるため、コンコンと湧く清水が見られない場所もあるそうですよ。

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