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認知症の母へ冷蔵庫の買い替えをスムーズに行った方法

実家の母は要介護1の認知症です。
自分の身の回りのことは、ヘルパーさんや私の手助けがあることで、なんとか行うことができる状態ですが、日常と違った出来事には対応できず、混乱します。

そんな母が毎日使っている冷蔵庫を、この度買い替えました。

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母が認知症になって困ること

母が認知症になってから、最も困ることは、日常と違った不測の事態が起きたときです。

認知症の母は、新しい環境、新しい出来事に対して、不安や恐怖を覚え混乱しますから、それらを取り除くまで私は相当のエネルギーを要することになります。

第一に、説明してもわからないこと。

どんなに順序よく、わかりやすく、丁寧に、繰り返し説明したところで、母はすぐに忘れてしまうので、それらの努力も一瞬にして水の泡となり消えていきます。

第二に、理論は通用しません。
たとえそれが正しい判断だとしても、優先されるのは母の感情です。

朝起きて食事をし、日中はテレビをみて過ごし、夜になってお風呂に入って眠る。
毎日単純な繰り返しこそが、母が心穏やかに暮らせる最大の幸せです。

しかし、日常生活の中に時としていろんな出来事が起こります。
その変化が、認知症の人にとって最も困ることになります。

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認知症の母とズレが生じるのはしかたがない

実家の冷蔵庫から間欠的に異音がするようになりました。
25年間使ってきた冷蔵庫ですから、そろそろ寿命が近づいてきているのでしょう。

そこで、年末年始も近いことだし、その前に買い換えようと考えました。

しかし、母にとっては、「まだ使える」冷蔵庫です。
「まだ使えるのに新しい冷蔵庫を買うのはもったいない」というのが母の性分です。
そして「(自分は)老い先短いのだから、新しい冷蔵庫は必要ない」というのが、母の考えです。

ところが私は、自分の経験と予測に基づいた考え方をします。
年末年始の慌ただしいときに、冷蔵庫が壊れたらやっかいだから、今のうちに買い換えよう。
25年間も使ってきたものだから、そろそろ寿命だろう。

認知症の母は目の前の、今この瞬間の現実が全てであるのに対し、過去の経験や未来の予測で判断し、行動する私とは、ズレが生じるのは当然のことでしょう。

だから、母と話をするとイライラしたり、怒りたくなったり、気分が悪くなるのは致し方ないことなのだと思っています。

母との感情のズレ幅を少しでも小さくするためには、余計な話は母へしないことにしています。

冷蔵庫を買い替えるためにしたこと

実家へ新しい冷蔵庫を設置するために、私が意識して取った行動です。

1.数日前から、冷蔵庫の不具合を母に何度となく伝える

これは、母に冷蔵庫の買い替えを決断させるためのものではありません。
母の記憶の片隅に、冷蔵庫が壊れかけてきている、ということを覚えてもらうためです。

2.当日冷蔵庫がくることを伝える

事前に話してもすぐに忘れてしまうばかりか、不安の種を植え付けることになるので、直前まで話しません。
当日になって初めて、これから新しい冷蔵庫がくることを伝えます。
「やっぱり冷蔵庫は壊れたの?」と、母も漠然と冷蔵庫の調子が悪いことを覚えているようで、スムーズに事が運びました。

3.ポジティブなことしか言わない

古い冷蔵庫を寄せてホコリだらけの床を掃除し「きれいになってよかったね」と必要以上に喜ぶ。
古い冷蔵庫に対しては「今まで25年も働いてくれてすごいね、がんばってくれたんだね」と、ねぎらう言葉をかける。
新しい冷蔵庫に対しては「きれいで気持ちいいね、コンパクトになって整理しやすくなったね」と、前向きになれる言葉をかける。

4.絶対に言ってはいけない言葉

「捨てる」「要らない」「汚い」「古い」など、ネガティブな言葉。

母はモノに対して「もったいない」「捨てるとかわいそう」という感情を持っています。
今は使っていないモノでも、大破しない限りはそのままそこに置いておくという考えです。

私が「これ要らないよね?」などと聞こうものなら、途端に怒りのスイッチが入りますから、あえて言葉選びは慎重にしています。

使っていないモノの処分

今回、冷蔵庫の横に置いてある米櫃付きの棚を処分しました。
もう何年も使っていない棚は、錆びてホコリが蓄積しているというのに、母は「壊れていないから捨てるのはもったいない」という理由でそのまま置いていたものです。

以前、うっかり「使っていない棚は捨てたらどう?」と言ってしまったら、母は激怒しました。

ここに棚を置いていたところで、誰にも迷惑をかけていない。
ならば、そのまま置いておく。

というのが母の考えです。

しかし、今回冷蔵庫を搬入するため、その棚を一時的に他の場所に移しました。
棚を別の場所に移すのでさえ、母が怒っていたのは、おそらく私に処分されてしまうと思ったからでしょう。
母へは、冷蔵庫を設置したら、また元に戻すと何度も話をして、ようやく了解してもらいました。

さて、新しい冷蔵庫も無事に設置。
隣にあった米櫃付き棚は、元に戻さず小屋の中に置いています。

母は「新しい冷蔵庫に慣れるまで大変だ」と何度も言いながら、コンパクトになった冷蔵庫の上に自分でいろいろモノを配置するのに忙しそうです。
米櫃付きの棚のことは、もうすっかり忘れています。

実家の片づけをすすめていきたい

母にとっては、今この瞬間がすべてなのです。

認知症の人へは、未来のことを話してもむなしくなるだけです。
過去の記憶はびっくりするくらいよく覚えているので、時々それらを呼び覚ますよう話を聞くこと。

不測の事態で新しい何かをしなければならない時は、直前に話してひたすら喜ばしい感情を植え付けること。
これが、母と付き合っていくことで学んだことです。

まだまだ実家にはたくさんのモノがあり、母は「私が死んだら全部捨ててくれ」と言いますが、その時に大変な思いをするのは私自身です。
私の気力、体力があるうちに少しずつ、母の日常生活に影響を及ぼさない場所から、片づけを進めていきたいと思っています。

 

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